冥婚と幽霊ミステリと同性婚の組み合わせ~『僕と幽霊が家族になった件』(配信、ネタバレあり)

 『僕と幽霊が家族になった件』をNetflix配信で見た。

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 警官のウー・ミンハン(グレッグ・ハン)は捜査の後片付け中、たまたま現場近くに落ちていた赤い封筒を拾ってしまう。それはひき逃げ事故で独身のまま急死したゲイの若者マオマオ(リン・ボーホン)をかわいそうに思ったおばあちゃん(ワン・マンチャオ)が、マオマオの冥婚相手を見つけるべく置いた封筒だった。ホモフォビックなミンハンは最初は拒絶するが、運気向上のためとうとうマオマオの死後の花婿になることを承諾する。ミンハンの目にはマオマオの幽霊が見えるようになり、マオマオひき逃げ犯を協力して探すことになるが…

 幽霊になった被害者が自分を殺した犯人を捜すみたいなミステリはけっこうあるが、これはそれに台湾の冥婚と同性婚が絡ませてある。亡くなった独身者に儀礼的な結婚相手を見つける冥婚は別にそんなに広く行われていることではないらしいのだが、この作品ではおばあちゃんとマオマオが台湾の同性婚合法化のために運動していたのにマオマオが同性婚できないまま亡くなってしまったということで、おばあちゃんが孫に結婚相手を見つけてやりたいと思った気持ちがよくわかるようになっている。ゲイカルチャーの描写がちょっと大げさに見えるところや、終盤ちょっと幽霊の設定が強引に見えるところなどはあるのだが、マオマオの幽霊と一緒に暮らすことでどんどん同性愛への偏見を改めていくミンハンの成長が丁寧に描かれていたり、悪役が意外にもけっこう深みがある…というか、女性差別のせいで悪事に手を染めることとなった様子がちょっと同情的に描かれていたり、全体的にはわりとよく考えて作られた楽しい映画である。最後にマオマオのお父さんの本当の気持ちがわかるところも良いオチだ。