香港の移民コミュニティを描いた作品~『白日青春-生きてこそ-』

 『白日青春-生きてこそ-』を試写で見た。

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 陳白日(アンソニー・ウォン)は中国本土からやって来て香港でタクシー運転手をしているが、警官になった息子とは不仲で、ぱっとしない暮らしをしている。一方、パキスタンから移民してきて両親が難民申請中の少年ハッサン(香港名は莫青春、サハル・ザマン)はカナダに行きたいと願っていた。ところが白日はハッサンの父親の車と衝突し、父親は死亡してしまう。責任を感じた白日はハッサンを助けようとするが…

 香港が舞台なのだが、移民コミュニティが主題の作品で、パキスタン系の移民などが多数登場する。香港が移民・難民の中継地だというのは、言われるとそうだろうなとは思うがなかなか気付かないことなので、香港のパキスタン系移民をきちんと描いているという点だけでもあまり現地事情を知らない者には大変興味深い。冒頭で移民のムスリムのつつましい結婚式と、白日の息子の豪華だがいろいろ問題もある結婚式が対比的に描かれていて、多民族社会としての香港がうまく浮かび上がってくるようになっている。

 終盤は2人の演技を見る感じの映画で、とくに子役のザマンは生意気で憎たらしいところもあれば愛らしいところもあってとても上手である。実の息子と全くうまくいかなかった白日が、自分のしたことに後悔してきちんと父親らしい役割を果たそうとするという展開になる。終わり方はちょっとビターである。