予告とは全然違う正攻法の歴史もの医療スリラー~『梟 フクロウ』(試写、ネタバレあり)

 アン・テジン監督『梟 フクロウ』を試写で見た。 

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 李氏朝鮮史書に出てくる謎の不審死を元ネタとする、歴史ものの医療スリラーである。鍼の名人であるギョンス(リュ・ジンヨル)は腕を認められて宮廷で働くことになるが、そこでよくしてくれていたソヒョン世子(キム・ソンチョル)が殺害されてしまう。ギョンスは自分の秘密を隠しながらソヒョン世子の殺人の真相を暴こうとするが…

 予告が「狂気の問題作」とか言っていてホラーっぽいのだが、内容は全然ホラーではなく、わりと正攻法のスリラーである。ネタバレになるが、ギョンスは目が見えないということになっている…ものの、実は夜になると少しだけ見える(つまり光に弱い)タイプの、今で言うロービジョンの一種みたいな症状を抱えた人で、周りがあまり自分の症状を理解してくれないので目が見えないことにしていたら非常にまずいものを目撃してしまって…という展開になっている。ちょっとセンセーショナルすぎる描き方でそこは若干問題があるようにも思うのだが、今でもロービジョンの人は「目が見えるくせに見えないふりをしている」みたいな難癖をつけられることもあるらしいので、そのへんは考えて作っているのかもしれない。陰謀が渦巻く理不尽な宮廷で障害のあるギョンスが戦う様子はスリリングだし、最後は強引だが一応オチにはなっていて、見応えのある作品だ。