ねむりが大好きアルモドバル〜『アイム・ソー・エキサイテッド』

 ペドロ・アルモドバル監督の新作『アイム・ソー・エキサイテッド』を見た。

 トラブルに見舞われた航空機内で、三人のオネエの客室乗務員、操縦士と副操縦士ビジネスクラスの乗客が右往左往する様子を描いた艶笑喜劇…なのだが、コメディというよりはどたばたのファルスに近いもので、また下ネタもけっこうエグかったりする。『オール・アバウト・マイ・マザー』や『ボルベール〜帰郷』みたいな成熟したタッチの作品と比べるとびっくりするほど軽い話だが、アルモドバルは昔『ハイヒール』とか『アタメ 私をしばって!』みたいなアホ艶笑劇をとっていたことを考えると昔に戻ったといえるのかもしれない。カラフルでポップな美術や、「世の中どこにでもゲイはいる!」というアルモドバル調は健在なのだが、ただちょっと笑いが上滑りして白けるところがあったり、またまたおそらくスペインの事情がわからないと笑えないのであろう諷刺ネタがあったり、そこまですごく面白いというわけではない…かも。

 あとさ、アルモドバルってなんか「眠ってる人と性交渉する」ことに異常な執着を持ってるよね?『トーク・トゥ・ハー』(←たぶん私これが一番嫌い)が顕著だが、これもなんかエコノミーの乗客が全員眠ってたり、またまた夢遊病や睡眠中の性交渉が出てきたり、やたらこだわりが感じられる。私、アルモドバルは基本的にすごく好きだし、あとよくわからないBDSMとかは全然大丈夫なんだが、ここだけは私がアルモドバル映画で全く理解できない(暴力的で薄気味悪いと感じることが多い)点で、あれは何なんでしょうねぇ…どうもSomnophiliaという名前がついてるパラフィリアの一種らしいけど。