子どもの面倒を見るだけでアドベンチャーになる〜『ニューヨークの巴里夫』(ネタバレあり)

 セドリック・クラピッシュ監督『ニューヨークの巴里夫』を見てきた。

 これ、『スパニッシュ・アパートメント』と『ロシアン・ドールズ』の続編らしいのだが、私はどちらも観ていない。というかたぶんクラピッシュの映画は『青春シンドローム』しか見たことないっぽい(なんかもう一本「最後に生理くるやつ」を見た覚えがあったのだが、あれはクラピッシュじゃなくデプレシャンだったことに後で気付いた)。

 とはいえ、全二作を全く見ていなくても楽しめる。基本的に主人公のパリ男グザヴィエ(ロマン・デュリス)が10年連れ添った妻ウェンディ(ケリー・ライリー)と離婚して子どものためにニューヨークに移住し、昔の恋人マルティーヌ(オドレイ・トトゥ)とくっつくまでを描くものである。

 とりあえず最初から編集がキレッキレで、グザヴィエが子どもを連れて慌ただしく移動するだけでまるでアドベンチャー映画みたいだ。執筆中のグザヴィエを中心に時間軸をバラバラに組み立てるところも良い。マルティーヌとの最初のラブシーンの、「くっついた→次の瞬間終わってる」という大胆な省略を用いた切り方は「見せない」+「言葉で反芻」することによってかえってセクシーになっていて大変良いと思った。この後の弁護士のスピーチを気を持たせつつ省略する切り方とかもとてもうまい。

 ちなみにこの作品、原題はCasse-tête Chinois(中国のパズル=難問のことだそうだ)ということで、チャイニーズがとにかくいっぱい出てくる。グザヴィエ(とにかく魅力的なダメ男だ)は中華街に住んでチャイニーズの女の子と偽造結婚するし、変な太極拳みたいなサークルがやたら出てくる。マルティーヌが中国語で商談する場面のなんともいえない可笑しさとかはちょっと説明しづらいのだが、あの「突然外国語を話すだけでおかしくなる」感はなんと形容すればいいんだろうか…