山崎吾郎『臓器移植の人類学―身体の贈与と情動の経済』

 山崎吾郎『臓器移植の人類学―身体の贈与と情動の経済』(世界思想社、2015)を読んだ。

臓器移植の人類学―身体の贈与と情動の経済
山崎 吾郎
世界思想社
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 臓器移植をいろいろな角度から捉えた人類学の研究書で、この分野には全く詳しくないのだが面白かった。臓器というのは基本的に無償でやりとりされるものなのだが、脳死移植なんかの場合、ドナーは亡くなっていてその遺族がいるということになるので、ドナー家族とレシピエントの間の情動が問題になる。この関係を贈与論なんかを使って分析しているのだが、基本的に臓器などを商品とみなしても贈与とみなしてもそれは「フィクション」(136)だが、「フィクション」を「ある秩序を成り立たせるための原理になりうるような、本質的な擬制」(136)として議論してるのがすごく面白いと思う。人間が自身の体にどういう意味づけをしているのか、という問題を考えさせてくれる本だ。