ダフト・パンクを殺しに行かない〜『EDEN/エデン』(ネタバレあり)

 『EDEN/エデン』を見てきた。

 ダフト・パンクと同じ時期にパリで結成されたDJデュオ、チアーズのメンバーであるポールの栄枯盛衰を描いたものである。ダフト・パンクは今でも非常に成功しているグループだが、チアーズはパリのクラブシーンを席巻した後、時代に取り残されて落ちぶれていった。ある程度実話に基づいており、ポールのモデルは監督ミア・ハンセン=ラヴの兄スヴェンらしい…と、言うと、U2のダチだったアイルランドのロックバンドが結局成功できずに落ちぶれていく様子を実話に基づいて描いた『キリング・ボノ』を思い出してしまうのだが、別に『EDEN/エデン』のポールは最後にブチ切れてダフト・パンクを殺しに行ったりはしない。

 しかし、これは完全に好みの問題だと思うのだが、私はぜんっぜん面白くなかった…このジャンルの音楽にあんまり思い入れがないのもあると思うのだが、とりあえずやたら暗い画面に、乗り物に乗るとわざとらしくカメラを揺らす手ブレ演出がすごく鼻について(プラス普通に手ブレ酔いして)映像的にあまり好きになれないところがあった。さらに年月を点みたいに追う編集の仕方がどうも好みではなく、もう少しなめらかに時の経過を表す演出をしたほうが…と思ってしまった。さらに話のほうもよくあるスターの没落話で、90年代へのノスタルジアだけみたいに思えてちょっとうんざりした。あと、ポールのホワイトボードはどんだけ物持ちがいいんだ…私、長期間放置されたホワイトボードの消えなくなった文字を掃除するのに苦労したことがあるんだが、あんなに長い間放置されたホワイトボードがあんなにすぐ消えるなんて、そんなホワイトボードあるなら欲しいぞ。

 ただ、面白いところが全くなかったわけではなく、顔があまり知られてないダフト・パンクの2人が「トマとギィ=マンです」とクラブで名乗って毎回入り口で入場を断られるくだりとかはちょっと笑えた。

 あと、この映画はベクデル・テストはパスしないと思う。女性はけっこう出てくるのだが、女性だけで会話する場面がほとんど無い。会話の場面ではたいてい男性が入っている。