爽やかな青春映画〜『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』

 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』を見てきた。前作は未見である。

 舞台はアメリカの高校である。オタクなスペンサー、成績優秀なマーサ、スマホに夢中の可愛いギャルであるベサニー、スペンサーをいじめているジョックのフリッジの4人が居残りを命ぜられる。そこでスペンサーがレトロなゲーム『ジュマンジ』を見つけてプレーしようとするが、アバターを選んだところ、そのままの姿でゲームの中に吸い込まれてしまう。4人はジャングルの中でゲームをクリアして家に帰ろうとするが…

 とにかく、オタクなスペンサーがドウェイン・ジョンソン演じるブレイブストーン博士に、可愛いベサニーがジャック・ブラック演じるオベロン教授になるというところだけで大当たりである。ベサニー/オベロン教授は、見た目はジャック・ブラックなのに、話し方や立ち居振る舞いがまるっきり可愛い女子高生にしか見えないところが凄い。ドウェイン・ジョンソンもユーモアのセンスを最大限に発揮しており、優しいけど引っ込み思案が性格が大きな体を持て余してるようなスペンサー/ブレイブストーン博士を楽しそうに演じている。ガリ勉で運動が嫌いなマーサがセクシーな空手美女ルビー(カレン・ギラン)に、勉強が嫌いな大男のフリッジが賢い小男ムース(ケヴィン・ハート)になるのもいい。

 全体的に女子2人のキャラクターがとても生き生きしている。オベロン教授になったベサニーがマーサ/ルビーに色仕掛けの訓練をするところはすごく笑える。ルビーは美女カレン・ギランが演じているのでまあ見た目はとてもセクシーなわけだが、中身は真面目なマーサなので立ち居振る舞いからにじみ出る色気がみじんも無い。しかしながらジャック・ブラックの姿をしたベサニーは訓練によって身につけたはるかに高い女子力を持っており(立ち居振る舞いが本当に可愛い)、訓練によりマーサ/ルビーにこれを身につけさせようとする。これを見ていて、ちょっとジュディス・バトラーのUndoing Genderに出てくる、バトラーがドラァグショーを見に行って、熟達したドラァグクイーンのほうが女性として生まれた自分よりはるかに伝統的な「女性らしさ」をうまく演じられるのだと思ったという話を思い出した。こういう感じで、女らしさとかお色気というのは訓練で身につける技術なんですよということを示しておいて、実際にマーサ/ルビーがお色気を使う段階になったら結局、色仕掛けより物理力のほうが効くといういい意味で脳筋的展開になるのも楽しかった。ルビーがいかにもステレオタイプなゲームの美女という感じの、ジャングルにはふさわしくない露出度のファッションで登場し、マーサが文句を言うあたりも笑える(ただ、これはもうちょっと突っ込んだ諷刺にしてもよかったと思う。マーサのキャラから考えるとちょっとツッコミが薄い)。なお、ベクデル・テストは、マーサがベサニーに作業を手伝うように言うところでパスする。

 全体的にはかなり『ブレックファスト・クラブ』に似ているのだが、それに比べると、勉強もスポーツも大事だということが示されており、子供が大人になるにあたってバランスの良い人格形成が必要なんだということを強調する展開になっていると思った。とても爽やかな後味の作品なので、オススメだ。