ユタ出張(9)ユタシェイクスピアフェスティヴァル、シアターマジックでいかだが動くハックルベリー・フィンの冒険『ビッグ・リバー』

 ユタシェイクスピアフェスティヴァル最後の演目として『ビッグ・リバー』を見てきた。これはマーク・トウェインハックルベリー・フィンの冒険』のミュージカル化で、80年代にアメリカのミュージカルが停滞していた時期に珍しくヒットした作品だそうだ。

 話はかなり原作に忠実で、ハック(ロブ・リオーダン)が虐待的な父親のところから逃げ出して、逃亡奴隷のジムとともにいかだでミシシッピ川を下り、行く先々でいろいろな人々に出会す冒険を描いている。言葉遣いなどもそのままだ。開演前に劇場に入り口に「Nワードが使われています」という注意書きがデカデカと貼られていたのだが、たしかにNワードがけっこう出てくる。ただ、逃亡奴隷であるジム(エゼキエル・アンドルー)のキャラクターはよりステレオタイプを避けるような描き方になっており、ジムや奴隷たちが自由を高らかに歌い上げる歌もある。

 よくできた楽しめるミュージカルだったのだが、なんといってもセットが大変作り込まれたもので、実際に舞台上をいかだが動くのが面白かった。これは観劇前日に出たプロップセミナー(小道具部門のスタッフによる解説セッション)でも話題になっていたのだが、中に人が入って動かすらしい。外から見ると本当に自走しているみたいに見えて、実によくできていた。