ユタ出張(10)ユタ・シェイクスピア・フェスティヴァルのバックステージツアー&セミナー

 ユタ・シェイクスピア・フェスティヴァルでは芝居の上演以外にもいろいろ教育ツアーなどがある。それにも参加したので、写真をまじえてちょっとまとめておこうと思う。
 シーダーシティの街並み。



 フェス会場。スタジオ、野外劇場、室内劇場の三つが稼働していて、さらに稼働していない野外劇場と、グリーンショーというのが行われる屋外パフォーマンススペースもある。南ユタ大学の敷地にある。





 シェイクスピア劇の登場人物の彫刻があるお庭。



 すごく素敵なグローブ型の劇場がふたつもあるのだが、こちらは古いので稼働してないらしい。





 夜の劇場から見たフェス会場。

 敷地内にある南ユタ現代美術館。ここではオセローに関する小展示と、ジェームズ・サールズというアーティストの特集をやっていた。

 サールズのオブジェ。なかなか良かった。

 フェスの上演以外のイベントでは、バックステージツアーとプロップセミナ−、プレイセミナーというイベントに参加したのだが、有料のバックステージツアーはスタッフ(私のグループは南ユタ大の学生で、美術と端役出演を担当している人だった)のガイドで全ての劇場の楽屋などを見せてもらえるし、作業中でなければ舞台にあがることもできる。どこの通路がどこに繋がっているとか、外から見ているとわからない動線を見ることができるし、演目によっては上演の後毎回セットを塗り直さないといけないとか、役柄によっては一時間半くらいメイクと衣装準備に時間がかかったりするとか、いろいろなことを教えてもらえる。
 プロップセミナーは無料で、小道具係のスタッフがその年に上演する演目の小道具類(プロップ)を解説してくれる。演目にあわせて作った小道具のうち3割前後は日の目を見ないそうだ(改良が必要だったり、結局使わなくなったりするらしい)。ステージ上で木の棒を折る演出がある芝居では同じ直径の棒をとんでもない数そろえないといけないとか(シーズン中ほぼ毎日折るので…)、コンピュータと連動する3Dプリンタや金属をくるくる巻く機械などの新しい技術のせいで小道具作りがかなり楽になっているとか、やはり面白い話を聞くことができた。また、ユタ・シェイクスピア・フェスティヴァルでは、お約束として毎回、小道具のデザインにサルをこっそり使うのが伝統だそうだ(これはある年の『ヴェニスの商人』用にかなり苦労してサルを作ったのにカットされたことがきっかけだそうだ)。
 プレイセミナーは毎朝行われる無料のディスカッションセッションで、南ユタ大の先生などスタッフの司会に沿って、前の日に上演された芝居について誰でも意見を言うことができる。私は『ヴェニスの商人』のディスカッションに行ったのだが、これについてはシャイロックは皆絶賛してたものの、アントニオを女優が演じていたことについては批判する意見も多く、賛否両論という感じだった。こういう誰でも議論ができるセッションがあるのは大変よいと思う。
 あと、ユタ・シェイクスピア・フェスティヴァル全体の感想としてちょっと面白かったのは、このフェスでは場面が終わるたびに拍手をするのが習慣らしいということだ。あまりイギリスなどでは見かけないのだが(とくに見せ場だったりするとすることもあるけど)、ユタ特有なんだろうか?また、ユタ・シェイクスピア・フェスティヴァルは大学内で行われているせいか大変商売っ気がなく、DVDなども出していないようだった。知名度の低さに悩んでいるらしい。