笑えてまとまりのある上演~チューリヒ歌劇場『セメレ』(配信)

 チューリヒ歌劇場の配信でヘンデル『セメレ』を見た。2007年の上演映像で、ロバート・カーセン演出のものである。字幕などはない。

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 『セメレ』は今年の初めにコーミッシュ・オーパー・ベルリンの配信を見たのだが、それに比べると全体的にメリハリをはっきりさせて華やかなところは目立たせるようにしており、まとまりのある演出だと思った。現代風なのだが、椅子とかベッドを使ってどちらかというと家庭的な雰囲気だったセットが最後に王宮らしくなって賑やかに終わる感じで、あまり気取った感じがなくストレートに盛り上げている。アタマス(トーマス・マイケル・アレン)やジュピター(チャールズ・ワークマン)がセメレ(チェチーリア・バルトリ)のことで悩んでいる場面などは音楽も演技もしっとりまとめている一方、セメレ、イノ(リリアーナ・ニキテアヌ)、ジュノー(ビルギット・レンメルト)などはわりと自己主張が強い女性陣である。

 笑うところもけっこうある。とくに笑えるのは、セメレが結婚式場から消えた後に結婚式のお客たちがセメレとアタマスの結婚がジュピターの介入で取りやめになったことを面白可笑しく報じるゴシップ紙を手に持って入ってくる場面である。見出しがいちいちパパラッチっぽくて可笑しい。