ドラマティックな歴史バレエ~『クレオパトラ in Cinema』

 Kバレエカンパニーの舞台を撮って映画館で上演するシリーズの一部である『クレオパトラ in Cinema』を見てきた。2022年10月29日にBunkamuraで上演されたマチネを撮ったものである。演出・振付・台本を熊川哲也が担当したオリジナル作品で、作曲はカール・ニールセン、指揮は井田勝大である。

 クレオパトラ飯島望未)がプトレマイオス(吉田周平)と争い、ポンペイウス(N・ヴィユウジャーニン)を助け、シーザー(遅沢佑介)と恋に落ち、最後はアントニウス(山本雅也)との恋に殉じるまでを描いた歴史大作である。かなりセンセーショナルな描写が多く、クレオパトラが男娼らしい人物を誘惑した後に毒殺したり(たぶん毒のテスト)、ブルータス(奥田祥智)が火刑に処されたり(史実ではなっていない)、要るかな…と思う描写もある。ただ、全体的にはかなりドラマティックで面白く、ヘビのように体をくねらせつつ、政治家としてはずる賢く、恋人としては情熱的に振る舞うクレオパトラは魅力的だし、バカ殿っぽいプトレマイオスが初っ端からけっこう笑いをとってくれるし、クレオパトラの人生を彩る男たちもそれぞれ個性的だし、途中のちょっと抽象化された船のセットや階段の使い方なども上手で、全く見ていて飽きない作品だ。終わりのところでは亡霊のように男たちが現れるが、あまり引きずらずにクレオパトラが潔く朽ちる感じも良かった。