コミカルな演出で前半のダイジェストっぽさをカバー~シアターχ『ペリクリーズ』

 中屋敷法仁演出『ペリクリーズ』をシアターχで見てきた。

 この芝居は序盤がダイジェストみたいな感じで(このあたりは書いたがシェイクスピアではない可能性もある)、あまり上演しやすい台本ではない。このプロダクションは語り手のガワー(藤田宗久)の狂言回し的な役柄を強調し、おじいさんがしてくれるおとぎ話風な雰囲気にまとめて、そのへんの散漫さをカバーしている。ガワーが休憩時間まで説明してくれる親切設計だ。

 海の芝居だということもあり、衣装は青系でまとめている。この手の芝居に踊りを入れると気取った感じになることも多いのだが、このプロダクションはあまりそういうこともなく、スムーズに見られた。ロマンス劇でとくに中盤から終盤は深刻なこともけっこう起こるのだが、全体的に笑いを配置することで上手にメリハリをつけている。とくにペリクリーズ(石原宇由)とサイサ(新上貴美)の恋路はロマンティックコメディみたいでかなり笑うところがあるし、マリーナ(古賀ありさ)が窮地に陥って暗くなりがちな売春宿の場面などでもたまに面白おかしいところがある。

 全体的にはけっこう面白く、あまりまとまりのない波瀾万丈な話をうまくまとめていると思ったのだが、『ペリクリーズ』にしてはすらすら違和感なく見られる分、今まであまり気にならなかったプロットのアラについて、現代的な観点からするとけっこう変だな…と思えるところがあった(これはプロダクションの問題ではなく、台本じたいの問題である)。とりあえず一番おかしいと思ったのは、サイサが海で救出された後、ペンタポリスの実家に連絡していなかったことである。ペンタポリスの実家に手紙のひとつも出していればペリクリーズが生存の情報がサイサの手に渡っていたのではないかと思うのだが、この芝居は基本的に島の間で通信がほぼ無いという前提で成立しているので、まあそのへんは気にせず見るしかない。