わりとセクシーな物語バレエ~英国ロイヤル・オペラ・ハウス『赤い薔薇ソースの伝説』(試写)

 英国ロイヤル・オペラ・ハウス『赤い薔薇ソースの伝説』を試写で見た。クリストファー・ウィールドン振付、ジョビー・タルボット作曲(台本はこの2名の共作)による新作バレエである。原作はラウラ・エスキヴァルの小説『赤い薔薇ソースの伝説』で、同名の映画にもなっている。2022年に上演された舞台を撮影したものである。

 20世紀初めのメキシコが舞台で、伝統を重んじる一家の末娘として生まれ、家訓で結婚を禁じられたティタ(フランチェスカ・ヘイワード)がヒロインである。ティタは幼なじみのペドロ(マルセリーノ・サンベ)に恋しているが、ティタの母エレナ(ラウラ・モレ―ラ)は家訓により結婚を許さず、ペドロはティタの姉ロザウラ(マヤラ・マグリ)と結婚する。ティタは得意な料理に愛情や不満を注ぎ込むことになる。

 マジックリアリズム風な大河ドラマで、たぶん初心者は事前に映画を見るか、あらすじを読んでいったほうがわかりやすいだろうと思う。全体的にとても豪華な作品で、またかなりセクシーなバレエである。男女ともに肌色のタイツだけの露出度の高い衣装で踊るようなところもあり、さらにティタとペドロの情熱を表現するための感情的でエロティックな振付もたくさんある。ウィールドンは『冬物語』を作ったクリエイターなので、雰囲気はちょっと『冬物語』に似ているところもあるが、だいぶ情熱的な恋愛ものである。

 途中のインタビューなどではメキシコ系のスタッフが、メキシコの話がバレエになるのはあまりないので嬉しいというようなことを話していた。たしかにこういう機会はそんなに多くないかもしれないので、こうしたプロダクションが成功をおさめるのはとても良いことだ。ただ、メインの2人のダンサーはメキシコ系ではないので(一応配役にメキシコ系とかブラジル系はいるのだが)、もっとたくさん中南米系のダンサーを起用してもいいのではという気はする。

 

赤い薔薇ソースの伝説

赤い薔薇ソースの伝説

  • マルコ レオナルディ
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