すごく良いと思うところとピンとこないところがある~『ハロウィン THE END』(ネタバレあり)

 『ハロウィン THE END』を見てきた。『ハロウィン』シリーズの一応の完結編である。

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 舞台はマイケル・マイヤーズが起こした惨劇のせいで不安が蔓延しているハドンフィールドの街である。2019年のハロウィンに、大人しい青年コーリー(ローハン・キャンベル)はベビーシッターをしていた家で事故を起こし、子どもを死なせてしまう。2022年、街でのけ者扱いされていたコーリーはローリー(ジェイミー・リー・カーティス)の後押しもあってアリソン(アンディ・マティチャック)と付き合い始める。ハドンフィールドにはしばらくマイケル・マイヤーズは出没していなかったが、ふとしたことからコーリーはマイケルを目撃し…

 『ハロウィン』シリーズとしては相当変わった作りである。どうも体調が悪そうな(というのもおかしいが)マイケル・マイヤーズにかわってコーリーが大きな役柄として出てきており、このコーリーのプロットじたいはなかなか新しいことをやっていて面白いと思うのだが、一方でこのシリーズのトーンに合っているかと言われるとけっこう浮いているような気もする。このため、薄幸の青年と非寛容な街の不幸な関係を描いた単体としては別につまらなくはないのだが、これがシリーズ全体の中核であるローリーの戦いとは雰囲気の点でかみ合っていない気がする。

 ローリーの戦いが終わって孫娘のアリソンが街を出て行けたのは良かった…というか、ジェイミー・リー・カーティスの演技にはけっこう感動してしまった。ローリーは若い頃からマイケル・マイヤーズとの因縁があったせいでいろいろ問題を抱え、街の人たちからは好奇の目で見られ、そのせいで気難しくなって家族ともうまくいっていない、言ってみれば同情すべきところはたくさんあるがいけすかないところもたくさんあるおばちゃまである。そういう複雑で奥行きもあるヒロインの人生における成長とサバイバルを、ジェイミー・リー・カーティスというパワフルな女優の成長そのものと重ねて見られるのは大変面白い。そして何があっても生き残るローリーは、ある意味では人生でいろんな困難や暴力に直面しているあらゆる女性を象徴するようなキャラクターでもあり、それがいろいろ苦労はしても最後に孫娘の助けでサバイバルするというのは希望が持てる終わり方だ。これでシリーズが終わって、これからのローリーはかぼちゃパイの上達とか、フランク(ウィル・パットン)とのデートとか、いろいろ穏やかな活動に専念して今後の人生を過ごせるのかと思うとなんとなく安心する。