よくできた映画だが…『ナチスに仕掛けたチェスゲーム 』(試写)

 『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』を試写で見た。シュテファン・ツヴァイクの短編「チェスの話」の映画化である。

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 映画はロッテルダムからヨーゼフ(オリヴァー・マスッチ)がアメリカに向かうところから始まる。かつてヨーゼフはウィーンで公証人をつとめていたが、ドイツがオーストリアを併合した時にオーストリア貴族の財産を狙ったナチスに拉致され、ホテルに監禁されてしまった。この監禁の間にヨーゼフはホテルの部屋でひたすらチェスの本を読み、チェスを覚えるが…

 主演のマスッチの演技をはじめとして、緊張感のある展開で大変よくできた映画である。ただ、正直私はあまり得意ではない…というか、回想を現在と行き来させる作りはたぶんチェスの複雑性みたいなものを表現するのにやっているのだろうが、私が全然チェスに興味がないことも関係しているのか、そこまで好みだとは思わなかった(あと、原作のほうが構成はすっきりしているのではないかと思う)。実は私は『ペルシャン・レッスン』も、よくできてはいるがあんまり好みではないな…と思ったので、たぶんこの種の「主人公が奇妙な技術と機転で正気を失いそうになりつつもホロコーストを生きのびました(ただし実話ではない)」みたいな話があんまり好きではないのではないかと思う。