よくできたブラックコメディ映画~『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』

 『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』を見た。

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 第二次世界大戦中、ユダヤ人の青年ジル(ナウエル・ペレーズビスカヤート)はたまたまペルシャ語の本を持っていたため、ユダヤ人狩りの際に自分はペルシャ系だというウソをついて死を逃れようとする。たまたま収容所の管理職であるコッホ(ラース・アイディンガー)がペルシャ語を習いたいと思っていたため、ジルは全く知らないペルシャ語をでっちあげてコッホに教えることで生きのびることになる。何度か正体がバレそうになりつつ、ジルは危ないところを切り抜けるが…

 強引な展開ながらも細部がリアルな作品だが、実話に基づいているわけではないそうだ。短編小説をもとに、ホロコーストサバイバルに関するいろいろな話からヒントを得て作った映画だということである。途中で「それはないだろ…」と思うようなところはけっこうある。ただ、主人公ジルの決死のサバイバルを描く張り詰めた映画である一方、ナチスホロコースト映画なのに収容所勤めのドイツ兵たちがいろいろ閉鎖的な職場特有のトラブルに直面していたり、ブラックなオフィスコメディみたいなところもあるのが面白い。演技は全体的にとても良く、ジル役のビスカヤートも、コッホ役のアイディンガー(私は実は生の舞台で見たことがある)も、ウソみたいな設定なのにちゃんと人間味のあるキャラクターを作り上げている。最後にコッホが結局逃げられない…というか、ナチスは騙されて当然だというきちんとしたオチになっているところも良い。