つまらなくはないのだが、いろいろツッコミどころも~『ザリガニの鳴くところ』

 『ザリガニの鳴くところ』を見てきた。原作は同名のヒット小説だが、未読である。

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 舞台は1969年のノースカロライナの湿地帯である。沼地で1人暮らしをしているカイア(デイジーエドガー=ジョーンズ)は恋人だったチェイス(ハリス・ディキンソン)の殺害疑惑をかけられ、たいした証拠もないのに逮捕されてしまう。街の人々から敵意を向けられているカイアを救おうと老弁護士ミルトン(デイヴィッド・ストラザーン)がカイアの代理人として名乗り出るが…

 崩壊した家庭に育ち、沼地で店を経営しているマディソン夫妻以外の助けは借りずにほとんどひとりで暮らしてきたカイアの苦労を描いた人間ドラマとロマンスにミステリを足した、いろいろな要素がてんこもりの話である。カイアはたくましい女性で動物画を描く才能があり、美人でもあるのでテイト(テイラー・ジョン・スミス)やチェイスが言い寄ってくる。このへんのカイアが美人なせいで要らない苦労をさせられてしまうあたりはなかなか見ていてキツいものがある。また、ミルトン弁護士を演じるストラザーンがとてもいい味を出している。

 全体的にいろいろ面白いところはあるのだが、ツッコミどころもけっこうある。カイアが沼地でひとりで暮らしている若い女性にしてはこぎれいすぎる…というか、街の人たちから「沼地の娘」として嫌われているというからかなりワイルドな女性なのかと思ったらけっこう可愛いワンピースなどを着て出てきたり、なんだか妖精みたいでちょっと美化されすぎているような気がする(主演のデイジーエドガー=ジョーンズはよくやってると思うので、着るものとか演出の問題である気がする)。また、一応どんでん返しみたいな謎解きは最後になるのだが、そこがけっこう唐突で、どういうトリックでそうなったのかは説明されないので、ミステリとしてはオチが急すぎる感じである。