演出には工夫があるが、ちょっとセリフ回しが…ニッショーホール『リア王』

 ニッショーホールで『リア王』を見てきた。昨日レビューした『マクベス』との同時上演である。

 『マクベス』に比べるとクラシック音楽がしつこくなく(リアとコーデリアが再会するところもマーラーはちょっと狙いすぎな気もするが)、演出にもけっこう工夫がある。道化(下條アトム)が最初に出てきて、最後にも一応顔を出すという構成はあまり見かけない。オズワルド(小山晶士)がエドガー(宮本大誠)に戦いを挑むところで、剣術が下手なオズワルドの剣がそのへんの岩だか木だかに刺さってしまい、力を入れて抜いた拍子に自分に刺さってしまうというのは笑った(たしかにオズワルドは武芸はてんでダメそうなキャラクターだと思う)。戦闘場面は相変わらずダンスみたいに派手で、一方でとにかく忠実なケント(加藤頼)が戦場で捕まりそうなコーデリア中島早貴)に呼びかけるというこれもあんまり見かけない演出がある。エドガーが最初ちょっとチャラ男なのは去年配信されたストラトフォードのプロダクションを思い出した。ただ、エドガーからもらった手紙にオールバニ(合田雅吏)がざっと目を通すところをカットしたのは見ていてちょっと不安になるのであんまり良くないかもと思う。

 ただ、全体的にセリフ回しはちょっと稽古不足かなと思うようなところもあった。『マクベス』もそうだったのだが、ちょっとセリフにもたつきが感じられるところがある。あと、コーデリアは低い声で話す落ち着いたキャラクターだと思うのだが、最初のところで声が高くてキャピキャピしすぎている。また、コーデリアを中心に、会話なのに登場人物が観客のほうを向いて話すという動きがけっこうあり、これは減らすべきだと思った。