金満ハリウッドはクズ、リージョナルシアターを守ろう~松竹ブロードウェイ『ホリデイ・イン』

 松竹ブロードウェイ『ホリデイ・イン』を見た。アーヴィング・バーリンが音楽を担当した映画を舞台化である。2017年のブロードウェイ公演を録画したものである。

 ジム(ブライス・ピンカム)はショービジネスの世界から足を洗い、コネティカットのメイソン農場を買って恋人のライラ(ミーガン・シコラ)と暮らそうとするが、ダンサーのライラに仕事のチャンスがめぐってくる。ライラはジムの親友であるスターダンサーのテッド(コービン・ブルー)とツアーに出てしまい、ジムはフラれる。傷心のジムはもともとメイソン農場に住んでいた学校教員で元パフォーマーのリンダ(ローラ・リー・ゲイヤー)と親しくなるが、農場は税金滞納で財政的にまずいことになる。ジムは農場を祝日にだけ営業する劇場付きB&B「ホリデイ・イン」にし、昔の仲間を呼んで休暇にショーを上演することで金銭的な問題を解決しようとするが…

 どうってことない昔ながらのお気楽な恋愛ものミュージカルだが、有名な「ホワイト・クリスマス」はこの作品の歌で、この曲をはじめとして歌もダンスも見どころ、聞きどころがたくさんある。また、『ハイスクール・ミュージカル』シリーズのチャド役で有名なコービン・ブルーがめちゃくちゃカッコよく、コービンのダンスを見ているだけでお金を払ったもとはとれるかなーという気になる。ホリデー気分で楽しめる豪華な舞台だ。

 ただ、全くそういう意図はないのだろうが、現代の視点で見ると「金満ハリウッドはクズなのでリージョナルシアターを守ろう」みたいなけっこう尖ったお話に見えてくるのがちょっと面白い。リンダたちはハリウッドでホリデイ・インのいきさつを映画化しようとするのだが、ハリウッドが現実を無視した脚色をしすぎているということでリンダは全く映画版が気に入らない。結局、ジムに求愛されたリンダはコネティカットに戻ってきて、素人っぽいところはあっても地域を支える活力の源としてのリージョナルシアターであるホリデイ・インに復帰する。さらにこのリージョナルシアターを支えているメイソン農場のアシスタントであるルイーズ(ミーガン・ローレンス)がどうもレズビアンらしいところもけっこう利いており(ジムのことははなから眼中になく、美女ダンサーたちの真ん中でバケツを靴代わりに履いて踊る楽しそうなことといったら…)、ホリデイ・インは地元の性的マイノリティが好きなことをして活躍できるリージョナルシアターでもある。