視覚障害の使い方に若干引っかかりが…『ビニールハウス』(試写、ネタバレあり)

 『ビニールハウス』を試写で見た。

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 訪問介護士のイ・ムンジョン(キム・ソヒョン)は、少年院に入っている息子ジョンウ(キム・ゴン)と一緒にまともな家で暮らすことを夢見つつ、ビニールハウスに住んでいる。ところがムンジョンは介護中のちょっとした事故で、被害妄想をつのらせていた認知症患者のファオク(シン・ヨンスク)を死なせてしまう。ムンジョンは身を守るため、入院していた自分の母(ウォン・ミウォン)をファオクに仕立て上げ、ファオクの夫である視覚障害を抱えたテガン(ヤン・ジェソン)を欺こうとするが…

 いくらなんでも「半地下はまだマシ」というキャッチコピーは『パラサイト 半地下の家族』を意識しすぎだろう…と思うのだが、『パラサイト』同様、韓国の住宅問題と格差を扱った作品である。ただ『パラサイト』と比べてブラックユーモアで笑うところがほとんどない。全編、真面目で深刻なサスペンスである。

 スリリングな展開と社会問題の捉え方、役者陣の演技はとても良いと思ったのだが、ちょっと引っかかったのが視覚障害をプロットデバイスとして使うやり方である。この点はちょっと『落下の解剖学』や『』とも似ていると思うのだが、視覚障害を抱えた人を替え玉で騙す…みたいな展開は、いくら当事者のムンジョンが良心の呵責で悩んでいるところも描かれているとはいえ、ちょっと引っかかった。個人的な好みだが、視覚障害をサスペンスのネタとしてのみ使うのはどうも障害じたいを軽視している気がしてあまり好きになれないところがある。