医者も魔術師も見ているウィキペディア〜『ドクター・ストレンジ』(ネタバレあり)

 『ドクター・ストレンジ』を見てきた。交通事故で手が動かなくなったスティーヴン・ストレンジ医師(ベネディクト・カンバーバッチ)が手の回復を求めてカトマンズのカマー・タージで修行を始め、そこで魔法の技術に秀でていることがわかってひょんなことから悪の魔術師カエシリウス(マッツ・ミケルセン)と戦うことに…という話である。

 たいした修行もせずにストレンジ先生が急に時間を操る優秀な魔術師になってしまったり、終盤の時間を操る展開がご都合主義的だったり、カトマンズの修行所にアジア系が少なすぎたり、いろいろツッコミどころはあるのだが、全体としてはけっこう面白かった。ベネディクトのいかにも頭が良くて自信満々で『シャーロック』をちょっと引きずってるキャラはいいし、やたらついてくるマントもなんか可愛い。チュイテル・イジョフォー演じるモルドとはちょっとシップの可能性を感じたのだが、最後にモルドが離れていってしまってちょっと残念だ。女性キャラクターとしては至高の魔術師エンシェント・ワンがいるのだが、これはティルダ・スウィントンが演じている。原作ではチベットの老師だそうで、これを白人にしたせいでけっこう批判されたらしいのだが、明らかに「アジア人の武道の老師ステレオタイプを避けるキャスティングだと思う。まあたしかに白人にしたのは微妙かもしれないが、ティルダはそもそも人間離れしているからな…なお、ベクデル・テストはパスしない。

 全体的にいろいろジョークが入っていて妙に笑えるものもあるのだが、個人的には序盤でウィキペディアが間違ってるという小ネタがあるのが面白かった。医者も魔術師も見ているウィキペディアを守るウィキペディアンである我々は最強である(ごめんなさい、嘘です)。