プロジェクションの使い方が面白い~『MEAN GIRLS』

 東京建物Brillia HALLで『MEAN GIRLS』を見てきた。ロザリンド・ワイズマンの子育て本『女の子って、どうして傷つけあうの?―娘を守るために親ができること』に基づく有名映画『ミーン・ガールズ』のミュージカル化である。ティナ・フェイが映画と同様に脚本担当で、音楽がジェフ・リッチモンド、作詞がネル・ベンジャミン、演出が小林香である。

 ヒロインのケイディ(生田絵梨花)はケニヤで野生動物の保護研究をしている動物学者の両親と16歳まで暮らしていたが、両親の転勤でアメリカに引っ越し、はじめて高校に通うことになる。ケニヤの田舎で自宅教育を受けて育ったケイディが高校では浮いてしまうが、アート系のジャニス(田村芽実)やダミアン(内藤大希)と仲良くなる。ところがひょんなことからケイディは学園のトップ派閥であるプラスティックスの目にとまったため、学園女王レジーナ(石田ニコル)に恨みがあるジャニスの入れ知恵でプラスティックスの様子を探ることになる。しかしながらケイディはだんだんプラスティックスの価値観に染まっていき…

 映画はたぶん21世紀のティーン映画の中では最も影響力のある作品のひとつで(最近だと『リベンジ・スワップ』はさらにダークだが明らかに本作の影響下にあると思う)、若い女性同士の足の引っ張り合いを、ミソジニー的な形ではなく諷刺した気の利いたコメディである。今見るとちょっと足りないところもあると思うが、2004年に作られた作品としてはわりとフェミニズム的なところもある。ミュージカル版も女性同士の足の引っ張り合いが実は文化的な同調圧力に根ざしたものであり、ひとりひとりが自分を肯定したり、内省したりしつつ連帯することで解決への道があるということを描いている。また、基本の筋は同じだが細部はかなりアップデートされており、映画に出てくるギャグで今だとピンとこないであろうものは削除され、SNSが前面に出た脚本になっている。

 プロジェクションの使い方にわりと特徴のある作品である。スクリーンが後ろに置かれていて、基本的にこれにいろいろな映像を投影することで背景が変わる。とくにレジーナの部屋などはかなりペラっとした背景に見えるので、レジーナがいかに外見を繕うことに留意しているかを象徴するようなセットになっている。授業でホワイトボードに数式を書くところでは、数式がどんどんプロジェクションで増えるのがちょっと視覚効果としては面白い。この数式の場面では歌とともにホワイトボードにプロジェクションで♡が飛ぶようになり、ケイディの浮き足だった気持ちがよくわかるようになっている。

 ジャニス役の田村芽実やレジーナ役の石田ニコルはかなり役に合った声質で、歌もうまい。ただ、私は個人的に生田絵梨花がミュージカルで良いと思ったことがあまりない…というか、声が明るすぎて、キャラクターが暗い気分になっているようなところでもちょっと陰影とかメリハリに欠ける感じがあり、好きではない。また、ホールがブリリアなので、相変わらず歌詞はとても聞こえにくい。

 

ミーン・ガールズ (字幕版)

ミーン・ガールズ (字幕版)

  • レイシー・チャバート
Amazon

 

Bossypants (English Edition)

Bossypants (English Edition)

Amazon