ステージ内ステージ~モネ劇場『薔薇の騎士』(配信)

 モネ劇場『薔薇の騎士』を配信で見た。2022年11月16日の上演を撮影したものである。アラン・アルティノグリュ指揮、ダミアーノ・ミキエレット演出による上演である。

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 舞台内に舞台がある変わった演出である。舞台内の舞台にはどうもマルシャリン(サリー・マシューズ)の考えていることとか回想していることが出てくるようで、けっこう現実からは離れている。とくに最後は白い衣装をつけたオクタヴィアン(ミイシェル・ロジエ)とゾフィ(イルゼ・エーレンス)が真っ白な雪の中で愛し合うところがおくの舞台で上演されていて、この2人の純白の愛は過去にマルシャリンも経験したのかもしれない若者同士の激しい情熱的な理想化された恋として提示される。ふつう出てこないマルシャリンの夫の元帥が舞台に出てきたりするのも珍しく、全体的にちょっと話の大部分がマルシャリンの心の中で起こっているみたいな感じである。

 けっこう面白いとは思うのだが、ただ第三幕でやたらと『鳥』みたいなカラスがいっぱい出てくるところはいまいち演出意図がよくわからなかった(とくにこの場面での舞台内舞台の使い方がよくわからない)。この場面ではオクタヴィアンがメイドのままの姿で到着してオックス(マーティン・ウィンクラー)を誘惑しており、オクタヴィアンは颯爽とした貴公子の姿の時よりもメイドさんの時のほうがなんか男性が女装しているっぽくてミョーな色気がある。ここのオクタヴィアンはかなり世慣れた感じなので、最後の白い衣装に着替えたオクタヴィアンはやっぱりマルシャリンが理想化した恋人の姿なんだろうなと思う。