ちょっと台本をカットしすぎか…ストラトフォード・フェスティバル『夏の夜の夢』(配信)

 ストラトフォード・フェスティバルの『夏の夜の夢』を配信で見た。ピーター・パシク演出で、夏の間に野外で上演した90分のプロダクションを撮ったものである。新型コロナウイルス感染症による劇場閉鎖の後、初めてストラトフォード・フェスティバルがお客さんを入れて上演したシェイクスピア劇らしい。

www.stratfordfestival.ca

 台本がかなりカットされており、少ない人数でとっかえひっかえひとりの役者がいろんな役をやる上演である。けっこう大人向けで、ボトム(アンドレ・シルズ)とティターニア(バハレ・ヤラギ)が派手にセックスするし、終盤に恋人たちが寝ているところを発見される場面では知らないうちにBDSMっぽい衣装を着せられ、ヘレナ(アマカ・ウメ)はディルドーまでつけていたりしてみんな驚愕するというところはけっこう笑える。全体的にパック(トリシャ・リンドストローム)がかなり活躍しており、恋人たちにいろいろふざけたイタズラを仕掛けて性的にしっちゃかめっちゃかで自由奔放な雰囲気を生み出している。このパックを演じるリンドストロームはイージアスも演じており、イージアスもパックもそれぞれ人間界と妖精界でトップではないが権力を行使しようとする人物ということで共通点がはっきり出るようにしてあると思った。

 『夏の夜の夢』の定番でティターニアとオーベロン(クレイグ・ローゾン)はヒッポリタ及びシーシアスと一人二役である。ヒッポリタとシーシアスは、最初(二人ともお風呂上がりにタオルとバスローブをきた姿で出てくる)はヒッポリタがあまり乗り気ではなく、とくにハーミア(エヴァ・フット)が強制結婚させられそうなのを見てかなり憤っているような感じだったのだが、終盤は他の恋人たちが結ばれて幸せそうなのを見て自分も乗り気になってくるというような感じの演出になっている。ただ、ティターニアとオーベロンについてはけっこうカットがあり、とくにこの二人のケンカの理由であるインドの子どもについての説明がほぼなくなっていてかなりわかりにくい。ここはちょっと台本をカットしすぎではと思った。