音楽と台詞のバランスが配信の課題か…明治大学シェイクスピアプロジェクト『ロミオとジュリエット』(配信)

 明治大学シェイクスピアプロジェクトの『ロミオとジュリエット』を配信で見た。

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 どうしても同じセットで上演された『ロメオ、エンド、ジュリエット』と比べてしまうのだが、やはり台本が新しいものになるだけでだいぶ違う。前の上演と比べて思ったのは、右の奥にある木が乱雑に置かれているスペースの使い方がかなり違う。『ロメオ、エンド、ジュリエット』では、ジュリエットがティボルトの訃報を聞く場面がこの右奥のスペースで、ここに机を置いてジュリエットの私室という設定でやっており、なんとなく「書生演劇」っぽい雰囲気を醸し出していたのだが、こちらの『ロミオとジュリエット』ではジュリエット(永山莉々子)の部屋は左上の階段をのぼったスペースで、そこからジュリエットが降りてきて舞台をかなり広く使ってやっている。全体的に比べてみると『ロメオ、エンド、ジュリエット』のほうが衣装も空間の使い方も台本に合わせて昔の書生たちがロマンチックに優しい雰囲気でやっている感じで、『ロミオとジュリエット』はプロローグを冒頭の乱闘場面の途中に組み込んでスローモーションみたいにみんなで一言ずつ言うようにしていたり、女優(揚喜清)が演じる極めてお洒落で優男のパリスが中国語の歌を歌いながら出てきたり、もうちょっと現代風だ。パリスは堂々とした態度の大変な優男で、たしかにこれならヴェローナの独身の娘たちには人気あるだろうが、少年ぽくて一途でジュリエットの前に出るだけでどぎまぎしてしまうロミオ(家入健都)が好みであるらしいジュリエットには全然、タイプじゃないだろうと思った(個人的にはパリスは「モテそうなのにロミオと全然違う」感があったほうがいいと思うので、これはなかなか適切だ)。

 台詞回しについては学生演劇なのでだいぶ未熟なところもたくさん見られる。あと、これも学生演劇なのでしょうがないのだが、舞台上で音楽が演奏されて台詞もあるというところでは音の録音のバランスがかなり悪い。たぶん音楽を小さく拾って台詞の音声を大きく拾わないといけないのだが、そんなことがふつうのが大学ホールの配信でできるのかは謎なので、まああきらめるしかないと思う。