全体的には楽しめたが、衣装デザインが少し不満~新国立劇場『ばらの騎士』

 新国立劇場で『ばらの騎士』を見てきた。サッシャゲッツェル指揮、ジョナサン・ミラー演出のものである。

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 遠近法を強調したセットで、第一幕と第二幕は右側に通路があって出入りできるような感じになっている(なお、遠近法を使ってちょっと歪んだ形のセットにしているせいで、右脇の席だとあまり舞台の全体像がわからなくて見づらかった…)。とくに第二幕のファニナルの家のセットはいかにもお屋敷の応接間という雰囲気で綺麗である。第三幕の居酒屋はけっこうがらんとしたシンプルなセットで、そこは良かったのだが、左側の窓際の通路が明るすぎるような気がした(本来は夜の設定なのでは?)。

 

 全体的にはよくまとまっていて音楽も綺麗だし、キャスト陣も好演していて、楽しめる作品だった。実は私は新型コロナウイルス流行が始まってからのここ2年で『ばらの騎士』を配信で6回も見たのだが(長くて外出自粛中の暇つぶしには最適である上、人気演目でわりとアーカイヴがあるのか、いろいろなところで配信されていた)、やはり生の舞台でこういう大作を見るのは良いものである。マルシャリン(アンネッテ・ダッシュ)がかなり内省的で、こういうやたら魅力的なのに自分らしく年をとれているのかが不安で物思いにふけってばかりの中年女性というのは、中年女性像としてはリアルな気はするのだが(そういう女はいる気がする)、若くて明るい性格の愛人オクタヴィアン(小林由佳)のほうとしては困るだろうなと思った。

 一箇所ちょっと気になったのがゾフィ(安井陽子)の衣装である。第二幕のソフィは灰色がかったドレスを着ているのだが、若くて世間知らずで可愛らしい女性が花婿候補と初めて会うのに、こんな大人の女が着るような地味なドレスを着るわけはないのでは…という気がした。第三幕でも最初のほうでゾフィが着ている上着はちょっと若い娘が着るには地味な気がした(中のドレスはわりと可愛い)。若々しいゾフィと大人の魅力のマルシャリンはドレスでもきちんと対比しないといけないと思うので、ゾフィの衣装は全体的にもうちょっと可愛い系の華やかな感じにしたほうがいいと思う。