脚本が駄目だと思う~『緑の夜』(試写)

 ハン・シュアイ監督『緑の夜』を試写で見た。

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 中国から韓国に移住し、空港の保安検査場で働いているジン・シャ(ファン・ビンビン)は、緑色の髪をした変わった女(イ・ジュヨン)と知り合うことになる。この女はどうも非合法なことがらに関わっているらしいのだが、2人はどんどん接近する。ジン・シャには横暴な夫(キム・ヨンホ)がおり、ジン・シャに性暴力を振るったので、この女とジン・シャは反撃し、2人は夫を殺してしまったと思って逃げる。

 『テルマ&ルイーズ』みたいなお話にしたいのだと思うし、主人公の2人の同性愛をけっこうはっきり描いてはいるのだが、主演2人の演技に頼りすぎで、全体的になんだかあまり練られていない脚本のせいでぱっとしない作品である。途中で緑髪の女がいなくなるし、終盤ではあまりにも警察が無能で、またあれだけいろいろもめ事を起こしたヒロインが何事もなく仕事に戻っていて、そのへんもリアリティに欠ける。最後も「またこれですか?」みたいな感じで、新しさは無い。とくに中盤のおそらくトランス女性ではないかと思われる酔っぱらいに関するところはひどい。途中で2人が女子トイレにいたところ、泥酔した男性のように見える人が入ってくる。この人に向かってジン・シャがここは女子トイレだと言うのだが、その人は明らかに酔っ払っていてぶっ倒れてしまう。ジン・シャと緑髪の女はこの人の財布からお金とホテルのカードキーをくすねてホテルの部屋にしのびこむのだが、ここでこの酔っぱらいがどうもトランス女性で、部屋に女性の衣服(ボアとかあったのでドラァグクイーンなのかも)を隠しているのを見つける。2人はセックスした後で女になりたいなんで全然わからない、女でいても全然楽しくないのに…みたいなことを言う。レズビアンがトランス女性からお金やらなんやらを盗んでバカにするというのは、見ていて非常に居心地が悪い。