ローズ・マッゴーワンの演技がいい~『ドゥーム・ジェネレーション』

 アイリッシュ・フィルム・インスティテュートのアメリカンインディーズ特集でグレッグ・アラキの『ドゥーム・ジェネレーション』を見てきた。エイミー(ローズ・マッゴーワン)とジョーダン(ジェイムズ・デュヴァル)の若いカップルがハンサムなゼイヴィア(ジョナサン・シェック)に出会い、どんどん殺人に巻き込まれていく…というお話である。エイミーが行く先々で誰かの元カノに間違われ、トラブルに巻き込まれるというのが続くダークな犯罪コメディだ。

 デビューしたばかりだった若いローズ・マッゴーワンの演技が大変良く、自由奔放でしっちゃかめっちゃかなインディーズ映画のヒロインを生き生きと演じている。さらに何を着ても可愛くてセンスがいい(ヘンな格好も似合う)。ひどいセクハラやケガなどのせいでローズのその後のキャリアがあんまり伸びなかったことを心から残念だと思った。パーカー・ポージーとかマーガレット・チョーなどがちょっとだけ出ている。

 ただ、お話のほうは1990年代はたぶんけっこうこういうのが革新的だったんだろうな…とは思うのだが、今の視点で見ると、ゲイ嫌いの国粋主義者どもがエイミーに性暴力を振るい、自分のバイセクシュアリティを自覚し始めたジョーダンが悲惨な殺され方をするというのはあまりにもバッドエンドすぎると思った。とくにジョーダンのプロットは今見るとやや掘り下げ不足であるように思える。最初に「グレッグ・アラキヘテロセクシュアル映画」というジョークみたいなサインが出るので(ここで館内爆笑)、これまでの暴力映画や犯罪映画などのある種のパロディ的な要素があることはわかるのだが、それにしても時代の産物だな…という気はする。アラキの映画なら『謎めいた肌』のほうが今見ても面白いのではないかと思う。