いい加減、発達障害の人についてこういう映画を作るのはやめたほうがいいと思う~『新居浜ひかり物語 青いライオン』(試写)

 『新居浜ひかり物語 青いライオン』を試写で見た。自閉症の画家である石村嘉成の半生を描いたものである。山陽放送が作った地元映画みたいな作品だ。

www.youtube.com

 とにかくダメな作品である。石村嘉成の画家活動に関するドキュメンタリーならまあいいと思うのだが、子どもの時から現在までの話が回想フィクションパートみたいな感じでくっついており、ここが低品質な再現ドラマみたいな感じで全く要らない。演技もたいがいわざとらしいし、演出も安っぽい。療育に関する教育的な内容が含まれているのだが、登場人物が突っ立って療育について説明するだけみたいなところが多く、これなら療育の専門家へのインタビューを織り込んで全部ドキュメンタリーにしたほうがマシだったと思う。

 さらに良くないと思うのは、この再現ドラマパートが基本的に石村嘉成の母親にフォーカスしており、この母がすごい犠牲を払って息子を育てようとする様子を感動的なお話みたいに描いているところだ。これは本来行政とかが支援すべきところが多いはずなのだがそれに対するきちんとした厳しい批判があるわけでもなく(多少はあるが、描き方がわざとらしすぎてちゃんと機能していない)、ただの感動話みたいになってしまっている。さらにこの種の映画は発達障害の当事者である本人の視点をもっと中心に構成すべきだと思うので、本人の創作についての話をもっとちゃんと盛り込まねばならないと思うのだが、それをあんまりきちんとやっていないので発達障害当事者の主体性があまり感じられない作品になっている。完璧とはいえないが『マイ・ファミリー』や『わたしの物語』みたいな障害のある人の主体性にもとづくドキュメンタリーがちゃんと作られている時代なんだし、発達障害当事者の端くれとして、こういう安っぽい感動映画はもう作らなくていいと思う。