大英博物館「死者の書」展

 大英博物館で「死者の書」展を見てきた。

 「死者の書」というのは何かそういうタイトルの一冊の本があるのではなく、古代のエジプトで死者を葬る時に一緒に埋葬した弔いの呪文集(spell。「呪文」という訳語でいいのかは自信ない)みたいなものの総称である。亡くなった人が黄泉の国に行くまでの様子をいろいろな絵と文字で書き記したもので、時代背景や作り手の個性、発注した人の注文などによりいろいろなバリエーションがあるようだ。この展示ではものすごい量の死者の書が展示されており、ヒエログリフのテキストのほうは読めないのでまあ仕方ないにしても絵のほうは結構時代や絵描きの技術で違うなと思った。アメコミみたいな絵を描く画家がいるかと思えば、「中国の文人が描いたものです」と言われても騙されそうな絵を描く画家とか…なんてったってエジプトの人たちは5000年前くらいからイエスが生まれるあたりまでいろいろな習慣や信仰を発達させてたわけなんで、流行廃りがあるのも当たり前である(よく考えると、キリスト教の神が生まれてから今までよりも、エジプトの神々が信仰されてた期間のほうが長いんだよね。まあアブラハムの宗教だっていつかは信じられなくなるんだろうな)。

 展示品の量がハンパじゃないわりに解説が少なく(オーディオガイドを借りるべきだったかも)、そんなにわかりやすくはなかった気がする…最後のほうとかずらっと並べられた死者の書にパネルは二、三枚とかで「この絵は何を示してるんだ?」と悩むようなとこもあった。さすがに非常にわかりにくいものには解説がついてたのだが、ヒエログリフの文章の内容についてはもう少しパネルを作ってほしかったかなぁ。

 ただ、見ていて思ったのは古代エジプト人の信仰というのは全く不気味とか暗いとかいうものではないということである。もちろん死ぬのは人生の一番暗い部分だろうが、死んだあと黄泉の国にたどりつくまでまだ旅路があるからトラベルガイドや護符みたいなものを一緒に埋葬しようとか、来世で復活するかもしれんからミイラを作ってちゃんんと備えようとか、ある意味ではできるだけ明るい死に方をめざす努力(?)に満ちた信仰だと思うんだけど。