オークランド(4)〜オーストラリア・ニュージーランドポピュラーカルチャー学会三日目 ドクター・フーに登場する科学者はどういう時に信用できるのか?

 最終日もあいかわらず濃い発表ばっかりで、なんかやおいの発表でドラゴンボールの人々が性交渉している絵とかを見せられて怖かったり、ニュージーランドマオリの「男性性」をどうナショナルアイデンティティに組み込んでるかという発表でニュージーランドラグビーナショナルチームの戦闘ダンス(?)を見せられてなぜか爆笑してしまったり(これだな)、パリス・ヒルトンのイメージについての発表でサウスパークヒルトンの回を見せられたり、なんかそういう発表ばっかりで疲れた…のだが、一番面白かったのはポピュラーサイエンスのセッションのLindy Orthia, 'Cross-dressing blokes can’t reason; man-hating chicks can’t weld: The gender politics of incompetent scientist characters in Doctor Who'という発表だった。これはドクター・フーの旧シリーズ(1963〜1989に放送、2005年にリブートする前のやつ)を全部見て、そこに登場する科学者がどういう場合に信頼できるタイプとして描かれ、どういう場合は信用できないかをジェンダーセクシュアリティの観点から分析するというやつで、すごい面白かった。うちは旧シリーズは見てないのだが、女性の科学者のほうが男性の科学者より登場数は少ないものの、信頼できるかどうかという点については結構ジェンダーで偏りがなく、'Gentleman scholar'タイプなら性別にかかわらず信用できるらしい。ただ、なよなよした男性科学者と男嫌いの好戦的な女性科学者はまず信用できない科学者として描かれるそうで、なるほどなと思った(一方、あまりセックスのにおいのしない気っぷのいいタイプの女性科学者は割合信用できるらしい)。是非リブート後のシリーズとスピンオフの『トーチウッド』でも同様の分析をやってほしいのだが(『トーチウッド』ちゃんと見てないんだけど、主人公がバイセクシュアルなんだよね?)。実はうちはクリストファー・エクルストンの時のドクター・フーはちゃんと見てないのだが、デイヴィッド・テナントのドクターってちょっとなんかデヴィッド・ボウイ以降の宇宙人だっていうかアンドロジェナスな魅力があると思わない?

 と、いうわけで、三日間の学会はこんな感じで終了。一応、学会に参加した目的はファンダム研究の動向を知りたいということだったのだが(実は古典的な演劇の観客研究はもうちょっと現代のファンダム研究とクロスオーヴァーしたほうがいいんじゃないかと思ってて)、どういう文献が読まれているのかとかもまあまあややわかったし目的は達することができたと思う。残念だったのは日本のファン研究が多くてアメリカもの(バフィとかトレッキーとか)が少なかったこと。もう少しアメリカのファンダム研究の発表が多かったらさらにヴァラエティがあっただろうにと思う。非常に漠然とした感想なのだが、学会に参加した感じからして、オセアニアでは日本のサブカルチャー研究が結構盛んな一方、セクシュアリティ系はアメリカ寄り?な気がしたな…まあ、学会にいっぺん出ただけではわからないけど。