さて、これまた昨日図書館での作業が終わったあとに行ってきたスミソニアンアメリカ美術館の詳細。建物はこの間行ったナショナルポートレイトギャラリーと同じ建物である。アメリカ美術専門の美術館で、フォークアートから現代美術までいろいろ展示している。
入り口右、ミュージアムショップ前のギャラリーから探索開始。
マルチプリシティという特設展をやっている。
これはジョン・ウィリアム・デイという人の「スイカの好きな象」という絵。可愛らしさの中にそこはかとなく狂気が…
これは暗かった上保存用ビニルがかけられていてワケがわからにのだが、ジェームズ・ハンプトンという人が作った神殿。もう見た目からひしひしと神経症が伝わってくるすごいアウトサイダーアートだった。
常設展のギャラリー。
常設展のエドワード・ホッパー。
ベルモア・ブラウン「族長のカヌー」。昔カヌーを少しやっていたので子どもの頃を思い出した。
アメリカらしい風景の絵がたくさんある。
デイヴィッド・ベック「美術館」。角度によっていろいろな風景が見える美術館ドールハウス。
なぜかねずみとりの特許についての展示が…
これのタイトルはなんと…
画家の家族名でとくにあの小説は関係ないらしい。
これ、『スリーピー・ホロウ』の一場面らしい。
ジョージ・カトリンのネイティヴアメリカン絵画ギャラリー。
カトリンはネイティヴアメリカンは白人と接触するほど文化を失っていくだろうと予測していたらしい。この絵に出てくるネイティヴたちも結構白人との交易で入手したものを身につけているとか。
絵画以外のものもたくさんある。
これは装飾ピアノ。
ジャンヌ・ダルクのレリーフ。
ロックウェル・ケントの「雪原」。喜び庭駆け回るイヌに注目!
これはイヌではなく、クマ。
ジョン・スチュアート・カリー、「エイジャックス」。
3階の教育センター。棚にたくさんの絵や彫刻、工芸品などが入れられており、オーディオガイドで歴史的変遷などをきいて勉強するというもの。
奥には修復センターもある。
最後に現代美術コーナーへ。
右側のヒトはほんものだが座ってるヒトは作り物です。
ほんものの出口かと…
ちょっとぎょっとした。ロバート・ロンゴ「無題」。
これまた核をテーマにしたハリー・ベルトイアの作品。
何この70年代。ジェシー・トレヴィゾ「ミス・ヘルマノス」らしい。
ナム・ジュン・パイク。
それで、昨日貼ったノーマン・ロックウェルの「帰郷」(ロックウェルは同じタイトルの絵を数枚描いてるらしい)だが、これを見たときなんか泣きそうになった。
…これ、一見お涙頂戴の古き良きアメリカふうでありながら実はいろいろな意味の層があってなんか本当はちょっとクィアな絵なんじゃないかと思う。左側の男性は復員兵で飼い犬と久しぶりに再会したのだろうが、主人の帰りをひたすら待つイヌというテーマはオデュッセイアを連想させ、復員兵がすごい苦労をしてきたのであろうことがなんとなく推測される。あと重要なのはたぶん復員兵の家族が描かれてないことである。ロックウェルの別の「帰郷」の絵には結構家族が描かれていたりするのだが、この絵からは迎えに来た家族が排され、イヌと復員兵だけが画面の中心で円に囲まれてクローズアップされている。ひょっとしたらこの復員兵はもともと家族がいないまま出征したか、あるいは戦争で家族が死んでしまってイヌ以外に家族がいないのかもしれない。天涯孤独で戦争で傷ついたのにイヌとふたりで生きていこうとする復員兵とか、所謂理想的な家族に支えられた兵士像(銃後の家族を守るため…みたいな)からははずれているという点でそこはかとなくクィアである一方、絵全体からは誰にでも理解できるような人生の苦しみと幸せの両方が絶妙に読み取れてなんか涙を誘うところがある。
…あと、私はこの絵を見て去年の津波で家を失ったあと犬と再会した女性の写真を思い出したのだが…(詳細はこちらなど参照)この絵を見たときワシントンでは3/11だったのだが、なんかそこはかとくなくつらかった。