どうして私はナイトミュージアムを愛するのをやめられないのか〜『ナイトミュージアム エジプト王の秘密』(ネタバレあり)

 『ナイトミュージアム エジプト王の秘密』を見てきた。

 主人公はニューヨーク自然史博物館の夜警であるラリー(ベン・スティラー)。ラリーはナイトプログラムの責任者に出世していたが、夜に博物館の展示品に命を与えるエジプトの魔法の石版が何らかの理由で変色し始めたせいで展示物の動きがおかしくなり、プラネタリウムオープニングパーティの晴れ舞台で大失態をやらかしてしまう。困ったラリーは、この石版の制作を行ったエジプト王子アクメンラー(ラミ・マレック)の両親を訪ねるため、館長のマクフィー(リッキー・ジャーヴェイス)に頼み込んでロンドンの大英博物館まで出張する。ところが大英博物館で動き始めた展示品のひとつである騎士ランスロット(ダン・スティーヴンズ)が石版を奪おうとし始め…

 『ナイトミュージアム』は私が大変気に入っている子ども向け映画シリーズである。いろいろくだらないところもあるし、とくにこの三部作最終作はかなりプロットに穴があるのだが(大英博物館が石版を受け取る時の手続きが明らかにおかしかったり、最後にランスロットが石版を返す理由があまりにもいい加減だったり、ものすごい保険がかかっているであろう石版をニューヨークに返還しなくていいとか一体どうなってるんだよ!とか)、それでも博物館の展示品が動くというだけで童心に返ってドキドキしてしまうし、ジオラマのミニチュア人形であるローマの将軍オクタウィウス(スティーヴ・クーガン)とアメリカのカウボーイ、ジェド(オーウェン・ウィルソン)のコンビが暴れ回るところを見るだけで批判精神がグニャグニャになってしまう。またまたエッシャーの絵に皆が入ってしまう場面はそれだけでお金を払う価値があるくらいは楽しい。そして今回はロビン・ウィリアムズの遺作となってしまったこともあり、もうウィリアムズのローズヴェルト姿が見られないのかと思うと悲しくなってしまうということもある。

 とくに私がこのシリーズを気に入っているのは、子ども向け映画にしてはわりと細かいところが反ネオリベラリズム的というか、文化や歴史を大事にしない金儲け主義をところどころで諷刺する表現があるからである。『ナイトミュージアム2』には「商品開発で金儲けするよりも博物館での文化財保護・研究のほうがずっとクリエイティヴだ!」というメッセージがあったと思うのだが、この第三作でも最後、博物館をやめたラリーが大学に行って教師になった…という後日談が語られており、いくつになっても学ぶことが大事だという社会教育・生涯教育の重要性がさりげなく語られている。また、この第三作ではオクタウィウスが明らかにゲイで、最初はちょっとびっくりしていたジェドがだんだんそれを気にしなくなっていくあたりの描写は子ども向けのおばかコメディ映画にしてはわりとナチュラルなんじゃないかと思った。

 なお、この作品はベクデル・テストはパスしない。重要な女性登場人物はサカジャウィア(ミズオ・ペック)とティリー(レベル・ウィルソン)くらいで、この2人は会話しないからである。