北村紗衣編『共感覚から見えるもの−アートと科学を彩る五感の世界』刊行!

北村紗衣編『共感覚から見えるもの−アートと科学を彩る五感の世界』(勉誠出版、2016)がとうとう刊行されました!
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 共感覚はひとつの刺激から二つ以上の感覚が発生する現象です。たとえば音に色が見えるとか、言葉に味がするとかです。生まれつきこういう感覚システムを持っている人がおり、私は文字に色が見える共感覚者です。たぶんこのブログを読んでいる人にもそこそこの数はいるんじゃないかなと思います。医学的な現象でオカルトとか超能力とは一切関係ありません。そんなに日常的に困ることはないですが、たまに共感覚のせいでちょっと混乱するというようなこともないわけではありません。

 序論は共感覚についての研究史で、私が人文・芸術分野における共感覚のとらえ方の変化を書いております(これはほぼ『共感覚の地平』のアップデート版なんで、そんなに新鮮味は無いです)。科学研究についてもう一本序論があり、こちらは書き下ろしでございます。

 第一部は「身体」ということで、ミラータッチ共感覚、ダンス、美術、音楽(スクリャービンとか)、子どもの教育などを扱った論考を収録しております。私はピーター・ブルックをはじめとするいろいろな舞台芸術を扱いました。

 第二部は「言葉」ということで、言語教育、宮沢賢治尾崎翠ランボー、エルンスト・ユンガー、ペルシアの詩、オノマトペ、味覚の語彙などが扱われております。共感覚について少し知るだけで、ここでとりあげられている作家たちの作品を読むのが楽しくなりますよ!

 この手の共感覚に関する人文芸術の論集は日本ではじめての試みだと思います。共感覚に興味がある方はもちろん、感覚一般に興味がある方、科学と人文学の学際交流とかに興味がある方、論文で扱われているそれぞれの主題に興味がある方、どなたでも楽しんで頂けるのではないかと思っております。勉誠出版の営業の予測ではこの本は売れないということなので、それを裏切れるよう、是非是非皆様お買い求めを!

序論 
共感覚の世界―何が起こっているのか 北村紗衣
共感覚の科学研究 松田英

第Ⅰ部 身体 
ミラータッチ共感覚と身体的自己意識 鈴木啓介(The University of Sussex)
ダンスに応答する共感覚―アラン・プラテル“Wolf” における諸要素と諸感覚の関係― 三宅舞
共感覚的演劇を求めて―『驚愕の谷』からシェイクスピアまで 北村紗衣
近代芸術と共感覚―「共働する感覚」への総合芸術的問いかけ― 後藤文子
社会は〈第六感〉の夢を見るか?―音楽における共感覚とその彼岸― 石川洋
感性の教育と共感覚―子どもの音感受の世界― 吉永早苗
「身体で考える」建築教育―子ども・空間・建築家の対話に見る共感覚的要素― 田口純子

第Ⅱ部 言葉 
共感覚と言語習得 ジェイソン・ホロウェル
日本文学における共感覚宮沢賢治尾崎翠を中心に 山下聖美
共感覚的表現は世界を変え得るのか―ランボーの「母音」を通してみる一考察 田島義士
感覚の境界の彼方に―ロマン主義、象徴派、エルンスト・ユンガーの詩作と思索 長谷川晴生
ペルシア文学に見る共感覚 藤井守男
共感覚オノマトペ:その事例と分析 坂本真樹
味のレトリック―おいしさの表現と共感覚 武藤彩加