1934年、『真夏の夜の夢』の映画撮影現場を舞台にしたバックステージもの~『ハリウッドでシェイクスピアを』

 ケン・ラドウィックのお芝居『ハリウッドでシェイクスピアを』を見てきた。これは2003年にアメリカで初演されたもので、日本では初演らしい。
 舞台は1934年、マックス・ラインハルトが『真夏の夜の夢』映画版をハリウッドで撮影している。そこに妖精の森へ帰ろうとして手違いで道に迷ってしまったホンモノのオーベロンとパックがまぎれこんだからさあ大変。オーベロンは主演女優のオリヴィアに恋をするが、例の恋の魔法をかける花をパックがきちんと管理していなかったせいで撮影現場は大騒ぎに…
 基本的にかなりドタバタしたコメディで、筋は大部分『夏の夜の夢』からとってきているが、台詞は他のシェイクスピアの芝居のものも多数使われ、さらにマレーネ・ディートリッヒ主演の『モロッコ』など他の映画からも引用がある。この時期にラインハルトが夏夢を作っていたのは史実なのだが、主演女優たちの名前や背景などはちょっと変えてある。ヘイズ・コードの導入が行われた境目の時期を舞台にしているということもあり、ウィル・ヘイズも登場する(このヘイズの使い方を見て、この間アッシュランドで見た『十二夜』はこの芝居をヒントにしていたのかと思った)。
 30年代ハリウッドの華やかさに『夏の夜の夢』を組み合わせたのは目の付け所が良く、恋の花のせいで役者やスタッフたちが皆とんでもない恋愛騒動を巻き起こしていくちょっと浮ついた色っぽい雰囲気がこの時代の映画界にピッタリだ。セットの美術は同じく30年代のハリウッドを舞台にしたアッシュランドの『十二夜』に比べるとちょっと見劣りするかとも思うが、全体的に気楽に笑える楽しい芝居としてまとめられていたように思う。
 

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