楽しいリーディング公演〜シェイクスピア遊び語り『空騒ぎ』

 絵本塾ホールで三輪えり花演出、シェイクスピア遊び語り第13弾『空騒ぎ』を見てきた。このシリーズを見るのは初めてである。

 5人の役者(三輪えり花、LUTHERヒロシ市村、岩崎MARK雄大、岩田翼、鈴木美紗)とピアニスト1人(加藤千晶)で全部の役をするリーディング公演である。背景は一応、プロジェクタを使って後ろに映す(プロジェクタとPCのトラブルで最初、背景が映らなくなるというトラブルがあった)。最初に簡単な解説があり、途中でもいろいろ背景説明があるという非常に初心者向けの公演だった。

 私はリーディング公演が大変苦手で、今までリーディングで最後まで起きていられたことが無いのだが、今回初めて最後までちゃんと目を開けて起きていられた。ふつうのリーディング公演よりも動きがあるし、歌手のLutherヒロシ市村が参加していて要所要所で歌が入るし、わりとテンポも良くて寝る危険性はあまりなかった。セリフはわりと気が利いており、ドグベリーが難しい言葉を使おうとして間違える場面は日本の政治家が漢字を読み間違えるネタ(安倍が「云々」を「でんでん」とか)にアレンジしてあり、ここは大変面白かった。あと、『空騒ぎ』は途中でちょっと場面の順番が妙なところがあるのだが、そのあたりもカットなどで解消されている。

 ただ、やはり私はあまりリーディング公演が得意でないので、「ここはやはり動きが欲しいな…」というところがけっこうあった。たとえば冒頭で戦場から帰ってきたクローディオがヒーローに再会するところについてはセリフがないので(他の連中はたくさんしゃべっているのだが、この2人がお互い話したりする台詞はない)、通常の舞台だと視線とか動きで2人の恋の芽生えを表現すると思うのだが、リーディングだとそういうことはできない。

 また、ものすごく初心者向けなので、既にシェイクスピアを何度も見ているという人は既に知っているとか物足りないと思うところもあるかもと思った。ただ、役者によるわかりやすい解説を聞くのは「ああ、こうやればわかりやすいかな」と思えるので教員としてはけっこう勉強になる。あと、冒頭の解説はちょっと飛ばしすぎではというところもあった。たとえばシェイクスピアが「女王陛下の劇団」に入ったという説明があったのだが、正確にはエリザベス一世治世では宮内大臣一座、ジェームズ一世(六世)の時代になってから国王一座になったので、厳密に言うとここは「国王陛下の劇団」と言わないといけないと思う。