かなりダメだった〜『きみへの距離、1万キロ』(ネタバレあり)

 キム・グエン監督『きみへの距離、1万キロ』を見てきた。

 デトロイト北アフリカの石油パイプラインの遠隔監視員をしているゴードン(ジョー・コール)が、パイプラインのある村で恋人と駆け落ちしようとしている少女アユーシャ(リナ・エル=アラビ)を監視カメラで見かけて恋してしまい、脱走を手助けしようとするという物語である。原題がEye on Julietであることからもわかるように、一応『ロミオとジュリエット』を下敷きにしている。
 カメラやロボットを使った遠隔監視によって見知らぬ人との交流が始まるという発想はいいのだが、全体的にすごく陳腐だ。北アフリカ(これも非常にもやっとした「北アフリカ」で、どういう文化を持つ村なのかよくわからない)の人たちはアユーシャとその恋人カリムをのぞいて非常に類型的で、ゴードンは未開の人々から美女を救い出す白人の救世主そのまんまに見える。さらにゴードンが映像だけでアユーシャに恋して見張るようになるのもストーカーチックで怖いし、上司にバレないよう、コーヒーに睡眠薬を入れるくだりにいたってはドン引きだ。そんなゴードンにアユーシャが心を許してしまう展開もずいぶんと御都合主義だし、カリムが死んじゃうところとそれに対するゴードンの対応の描写もちょっといくらなんでもひどすぎはしないかと思う。女性のキャラクターは大変薄く、ベクデル・テストはパスしない。さらに中盤はけっこうゆっくりしてて、たるいところもある。まあ、とにかく全体的にけっこうひどい映画だった。
 発想はいいので、むしろ恋愛要素をなくしてコメディとかにするか(おちゃらけた監視員が石油泥棒だと思って監視してるうちについほだされて奮闘してしまうとか)、あるいは『善き人のためのソナタ』くらい作り込んだ話にすべきだったのではと思う。