昔のミュージカル映画みたい~松竹ブロードウェイシネマ『シー・ラヴズ・ミー』(ネタバレあり)

  松竹ブロードウェイシネマ『シー・ラヴズ・ミー』を見てきた。2016年の上演を撮影して映画館で上映するというものである。METライブビューイングのブロードウェイ版、NTライヴアメリカ版とでもいったところだろうか。

 

 原作はミクローシュ・ラースローの『香水店』という戯曲だが、たぶんエルンスト・ルビッチの『桃色の店』のミュージカル版といったほうがわかりやすいだろうと思う。ちなみに『香水店』は私は見たことがないのだが、『桃色の店』、『グッド・オールド・サマータイム』、『ユー・ガット・メール』と3回映画化されており、これは全部見たことある。

 

 舞台は1930年代のブダペストである。マラチェックの香水店で働くジョージ(ザカリー・リーヴァイ)は見知らぬ女性と文通し、手紙から感じられる知性やユーモアに魅力を感じている。ジョージは香水店に新しく入って来た店員のアマリア(ローラ・ベナンティ)とは犬猿の仲だが、実は文通相手はアマリアだった…

 

 30年代のブダペストを再現したおしゃれなセットの前でジョージやアマリアをはじめとする登場人物たちがいかにもロマンティックコメディらしく歌ったり踊ったりする様子は、まるで昔のミュージカル映画みたいである。昔のミュージカル映画はいかにもセットらしい建物の中で歌ったり踊ったりするところがちょっとキッチュな魅力だったのだが、何しろ舞台はCGもロケもできないのでセットを建てるしかなく、そこで歌ったり踊ったりしている人を撮ると本当に古典ミュージカル映画みたいに見える。

 

 役者陣は皆とても好演しており、『シャザム!』に出ていたザカリー・リーヴァイがジョージの役で、歌もうまいしなかなか魅力的だ。ジョージは『桃色の店』ではジェイムズ・スチュアートが演じていたのだが、ザカリーもああいういかにも近所の好青年という感じの役がよく似合うようだ(映画でもミュージカルに出てほしい)。アマリア役のローラ・ベナンティはとても歌がうまい。『アリー・マクビール』に出ていたジェーン・クラコウスキーが香水店の同僚イローナの役で出ていて、相変わらずすごく元気に歌ったり踊ったりしてくれて大変楽しかった。脇役陣も皆いい味を出している。

 

 次は『ロミオとジュリエット』をやるそうで、是非このプロジェクトは続けてほしいものだが、なんかちゃんとしたプロジェクトじたいの宣伝サイトが見当たらず、インスタグラムやらフェイスブックに飛ばされてしまう。NTやメトにならってちゃんとしたプロジェクトサイトを設置して宣伝すべきだと思う。