政治の話はしない~『おしえて!ドクター・ルース』(ネタバレあり)

 試写会で『おしえて!ドクター・ルース』を見てきた。アメリカの著名なセックスセラピスト、ドクター・ルース・ウエストハイマーに関するドキュメンタリー映画である。longride.jp

 ドイツのユダヤ人で、ホロコーストサバイバーであるルースは苦労して大学に行き、40過ぎで家族計画の研究で博士号をとった。その後、人々の性の悩みに答えるため大学で研究をしていたところ、ラジオから声がかかって番組を持つようになり、やがてテレビにも出演するようになった。大人同士が合意にもとづいて楽しむことは全部OKであるという開けたスタンスで人々の性の悩みに答える番組で、アメリカでは大人気だったらしい。90歳になった今でも引っ張りだこだ。

 アニメーションを交えて描かれるルースの波乱に満ちた生涯は大変面白いのだが、気になるのは戦後の一時期、イスラエルでルースがスナイパーをしていたという話である。ルースはフェミニストを自称せず、テレビで政治の話をしないらしいのだが、このへんの身の処し方は明らかにイスラエルでスナイパーをしていたことと関係ありそうだと思った。子供や孫たちが指摘しているように、ルースの活動じたいは明らかにフェミニズム的だし、性についての議論というのは政治にかかわっているのだが、ルースは意識的に政治から距離を置こうとしている。そのあたりにもう少し突っ込んでほしかったところはある。