最後の文字は日本語にすべきでは?~『ウエスト・サイド・ストーリー』Season 1

 IHIステージアラウンド東京で『ウエスト・サイド・ストーリー』を見てきた。マリア役が北乃きい、トニー役が蒼井翔太アニタ役が樋口麻美、リフ役が上山竜治、ベルナルド役が水田航生の回だった。

 わりと狭いセットを使った場面から始まるので、最初はちょっとセットの奥行きや幅の生かし方が足りないように思った…のだが、ドクの薬局の作り込んだ感じとか、体育館の奥行きを使ったダンスなどはなかなか空間の使い方が上手で、メリハリを考えたセットにしているのだなと思った。この劇場特有の回転をうまく使って移動や時間経過、夢と現実の移り変わりなどを示しているのは良い。

 演出は民族対立や宗派対立、暴力を強く批判するタイムリーなものだ。キャストは日本人チームなのだがブラックフェイスなどはもちろん使っておらず、それでもきちんと対立や差異がわかるように演出している。ただ、最後に世界各地のテロや大量殺人事件などの日付と地名がプロジェクションで表示されるという演出があるのだが、あれは日本語に訳したほうがいいのではと思う。全部アルファベットだと日本語のお客さんにはやや見づらく、たぶんわからない観客もいたかもしれないと思う。

 ちょっと気になったのは歌のクオリティがまちまちなところだ。とくに北乃きいのマリアは、台詞や表情は悪くないのに歌がかなり不調だった。トニーと結婚式ごっこをするところなど、子供っぽい遊びで夢を見るしかない2人の切ない気持ちがよく表れていてなかなか良かったのだが(全体的にこのプロダクションのトニーとマリアはすごく若く、むしろ子供っぽくて無垢な印象だ)、歌い出すと突然堅くなってしまうのがあまり良くなかった。