1950年代のアイルランド映画の初公開~『もうひとつの楽園』

 アイルランド映画祭にてミュリエル・ボックス監督『もうひとつの楽園』を見てきた。ボックスはイギリス人だが、アイルランドで初めて長編を監督した女性だそうである。日本では初めての公開だということだ。

 暗殺されたアイルランド独立戦争の英雄ジャック・カーベリーの銅像をめぐる田舎町のあれこれを描いたコメディである。地元の人々のみならず、久しぶりに里帰りした地元の金貸しの娘マイラ(オードリー・ダルトン)、同じく大学から里帰りした神父志望のコナー(ノーマン・ロドウェイ)、売りに出ている屋敷を買いに来たイングランド人のブラウン(レスリー・フィリップス)などを交えていろいろな騒動が起こる。途中でコナーにもブラウンにも隠れた背景があることがわかり、また銅像が爆破されたりもするのだが、最後は全部丸く収まる。

 わりと諷刺的で笑えるところも多い作品である。若干『テッド神父』なんかを思わせるところもある。もともとはアビー劇場でやった芝居の映画化らしいのだが、あまり舞台の映画化という感じはなく、けっこう広がりのある映像だと思った。