面白いところとそうでもないところが~『ハムレット』

 R’s アートコートで『ハムレット』を見てきた。野口和美演出のオールメール公演である。

 太陽と月が後ろにかかっているセットで、中央の張り出したところも上演に使えるようになっている。長持みたいな長方形の箱をある時は台、別の時はついたてみたいにいろいろフレキシブルに使っている。台本はかなり短く刈り込んである。

 面白いところと「これは要るのか?」というところが両方ある感じのプロダクションだった。オフィーリアをマジシャンの渋谷駿が演じているのだが、最近は台詞が少なく、人から見られる対象にされるばかりのオフィーリアに写真撮影など自己表現的な趣味を持たせる演出もけっこうあり、これもその一種である。とくに狂気に陥ったオフィーリアがマジックで自分で花を出すところは、言えないこと、心に秘めていることが勝手に花になって出てきてしまっているみたいな感じで演出としてはなかなかいいと思う。

 ただ、女性役の使い方はもうちょっと統一的にしたほうがいいのではないかと思った。オールメール公演だし、女性役については男社会でないがしろにされている存在として特異性を出そうとしているのはいい試みだと思うのだが、ちょっとまとまりがないと思えるところもある。オフィーリアはほとんどしゃべらないものの少しだけ話すところもあるのだが、どうせなら全く話さないほうがいいのではと思うし、また最後のマジックのシークエンスは緊張感が減るのでなくてよい気がする。ガートルード(演出家の野口自身)がZoomでしか出てこないのも面白いと思ったのだが、途中から実際に舞台に出てきてしまうので、これもどっちかに統一したほうがいいのでは…と思った(最後に毒を飲んで死んでしまうので、舞台に出さないわけにはいかないのだが…)。

 

 また、役者によって台詞の馴染み方がけっこう大きく違っていたと思う。わりと途中でトチッたりもたついたりしている人もいれば堂々たる台詞回しの人もおり、これはこれまでの経験の差かと思った。