熟練の芸と若手のギャップが…カクシンハン・プロデュース実験公演・若手育成公演『ハムレット』

 シアター風姿花伝でカクシンハン・プロデュース実験公演・若手育成公演『ハムレット』を見てきた。キャストが複数バージョンあるのだが、私が見たのは4月29日の昼の公演である。これは通常の半分くらいの稽古日程で若手中心にシェイクスピア劇を作るというシリーズのひとつである。

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 相変わらずパイプ椅子が活躍するシンプルな舞台である。何もないところの三方にパイプ椅子が置かれ、台詞のないキャストもずっとそこに座っている。劇中劇が義太夫なのだが、その時は台や座布団などが運び込まれて使われる。

 女優が演じるハムレット(有田あん)は良いし、若手も頑張ってはいて、最後まで楽しめるエネルギッシュな舞台ではある。2時間15分に刈り込んでいるが、だいたいカットに問題もなく、スピーディだ。しかしながら能の装束を着けて入ってくる先王の亡霊(山井綱雄)や、劇中劇を義太夫で演じる旅役者たち(竹本越京・鶴澤寛也)の落ち着きに満ちた円熟した芸に比べると、やはり未熟なところがある若手の演技はちょっと分が悪く、場をさらわれてしまっているように見えた。また、オフィーリア(大野明香音)は元新体操選手の方がやっているそうなのだが、オフィーリアだけ体の動きが違いすぎて、むしろ他とあっていないように見える。こういう芝居がかかっていてかつなめらかな動きをオフィーリアがするなら、お父さんのポローニアス(岩崎MARK雄大)が芝居好きでそういう父娘だということを強調したほうがいいのではと思うのだが、そのへんの台詞はけっこうカットされてしまっているので、ちょっとオフィーリアが浮いているように見えた。