非常に重い映画~『月』(試写)

 『』を試写で見た。同名小説の映画化である。

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 かつてはヒット作を書く小説家だった堂島洋子(宮沢りえ)は森にある障害者施設で働き始める。実は洋子には以前、売れない映画作家である夫の昌平(オダギリジョー)との間に障害のある子どもが生まれていたが、幼くして亡くなってしまっていた。洋子は施設で絵が好きなさとくん(磯村勇斗)をはじめとする同僚に会うが、施設では障害が重い収容者に対する虐待が行われていた。

 現実に起こった事件を題材にしており、とにかくものすごく重くて暗い映画である。さらに原作が書かれたプロセスじたいについても、実際の事件や障害者の人権について作家がある意味では障害者の視点を簒奪して書くのはいいことなのか…というような相対化というか内省があり、作るほうも戸惑いつつそれでも作らないといけないと思って作ったというような映画になっている。ただし、この内省みたいなのはあんまりうまくいってないというか、なんかエスクプロイテーション系のホラーみたいになってしまっているところもあり、あまりきちんと処理できていないと思う。磯村勇斗宮沢りえオダギリジョーといった主演陣は安定した演技を見せており、とくに磯村勇斗は最近『正欲』でもとても演技が良かった…ものの、こういう役ばかりでイメージが固定化しないか若干心配になるくらいしっかりした芝居をしている。