オゾンらしいお洒落な犯罪もの~『私がやりました』(試写)

 フランソワ・オゾン監督『私がやりました』を試写で見た。

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 舞台は1930年代のパリである。若手女優のマドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)はセクハラプロデューサーからすんでのところで逃げ出すが、その直後にプロデューサーが殺されたため、殺人の疑いをかけられてしまう。親友である弁護士ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)が書いた筋書き通りで悪徳プロデューサーを正当防衛で殺したフリをし、マドレーヌは一躍著名人になり、仕事も上向きになる。ところが自分が真犯人だというかつてのサイレント映画のスター、オデット(イザベル・ユペール)が出てきて話がややこしくなる。

 1930年代の戯曲が原作だそうで、ちょっとプレコード映画のようでもあり、女性弁護士が法廷でフェミニズム的な弁護を行うところは『アダム氏とマダム』のようでもあり、また女性たちが殺人で名を上げようとするところは『シカゴ』なんかにも雰囲気が似ている。みんな自分のことしか考えていないわりには最後に女性陣が共同戦線を張って連帯せざるを得なくなるあたりをちょっと皮肉も交えてユーモラスに描いており、お洒落で笑える女性映画だ。ただ、利益のための偽犯罪なのにポーリーヌがけっこうちゃんと女性の権利のためのフェミニズムっぽい弁論を法廷でやるところは、この文脈でやっても茶化しているようにしか聞こえないしなぁ…とも思った。まあ、そういう一筋縄ではいかないところも含めて非常にフランソワ・オゾンっぽい映画である。