とんでもないバッドエンド~『ザ・ヨーメン・オブ・ザ・ガード』(配信)

 2023年度の国際ギルバート・アンド・サリヴァン祭『ザ・ヨーメン・オブ・ザ・ガード』(The Yoemen of the Guard)を配信で見た。サイモン・バタリス演出、マリー・ヒプキン音楽監督による上演で、ナショナルG&Sオペラカンパニーによるものである。バタリスはジャック・ポイント役も演じている。

 一度すごく現代風の演出で見たことがあるのだが、オーソドックスな演出で見るのは初めてである。この作品はギルバート・アンド・サリヴァンの作品の中でもアホっぽいドタバタが少なく、わりと深刻な感じで終わるのだが、この演出はけっこうなバッドエンドである。なにしろヒロインのひとりであるエルシー(ケリ=アン・マスターソン)に失恋したジャックは、ショックのあまり最後の'I Have a Song to Sing, O!'を涙のせいでほとんど歌えず、最後はそのままぶっ倒れて終わってしまう。ちょっとショッキングな終わり方である。もうひとりのヒロインであるフィービ(ミュリエル・カニンガム)は実際的な性格で歌も生き生きしており、気が進まないながらもまあ実生活のためには妥協が必要…とあまり好きではない相手との結婚を選ぶ。なかなかシビアな作品だが、出演者のおかげもあってまとまりのあるプロダクションになっていると思う。