悪くないが、好みかというと…『キャバレー』

 プレイハウスで『キャバレー』を見てきた。レベッカ・フレックナル演出で、キャストを変えながら何度かやっているものである。

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 CABARET at the KIT KAT CLUBというタイトルになっていることからもわかるとおり、キットカットクラブで上演するという体裁の作品である。劇場に入ると観客は入り組んだ通路に案内されるのだが、そこでも既にキットカットクラブ風のちょっとしたショーをやっている。ちょっと早めに行ってそのあたりを楽しむところから始まる。

 丸くてやや狭い舞台なのだが、奈落とせりの使い方が特徴的である。キャバレーのシーンで舞台がせり上がってくるのはわかるのだが、シュルツ(テディ・ケンプナー)がシュナイダー(ベヴァリー・クライン)にパイナップルをあげるところで、パイナップルがせりの上に置かれてロマンスが盛り上がると一段高くなるところはちょっと変わった使い方で面白い。他にもサリー(カーラ・デルヴィーニュ)のトランクがあったところからどんどん人が出てくる演出があったり、奈落が効果的に使われていてけっこう良かった。

 いろいろ面白いところはあるプロダクションなのだが、私はどうもカーラ・デルヴィーニュのサリーがあんまり好きになれなかった…というか、これはたぶんデルヴィーニュがなんかちょっとポッシュな感じがするからだと思う。原作のモデルになったサリーはたぶんちょっとポッシュな家の娘だったので、本来はこういう感じでいいのだろうが、どうもサリーがポッシュだと、特権階級のお嬢さんが貧乏ごっこをしているような感じに見えてなんとなくピンとこない気がした。また、始終サリーがヒラヒラした服を着ており、さらにキャバレーで歌う時もとても舞台衣装とは思えないガウンとかで歌っていてあまり現実感がない演出になっているので、そのへんもあまり私が好みだと思えなかった一因かもしれない。