カットしすぎでは?~ドイツ・オペラ・アム・ライン『ロメオとユリア』(配信)

 ドイツ・オペラ・アム・ラインのボリス・ブラッハーによるオペラ『ロミオとジュリエット』を配信で見た。そういう作品があること自体全く知らなかったのだが、ブラッハーはバルト・ドイツ人の作曲家で、これは1943年の作品だということだ。今年の3月19日の上演を撮影したもので、マヌエル・シュミット演出、クリストフ・ストッカー指揮である。

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 四角いセットを二階のバルコニーが囲んでいて、真ん中でロメオ(Jussi Myllys)やユリア( Lavinia Dames)が繰り広げる物語を上から他の人が見下ろすというような作りのセットである。途中で奈落がせり上がってくる演出もあるが、だいたいはシンプルなボックスという感じの見た目だ。ユリアの葬儀では下の舞台をお墓に見立てて上から人々が花を投げる。

 歌詞はけっこうもともとの戯曲を訳したものを使っているのだが、ものすごくカットされていて、全編1時間10分くらいしかない。このカットのやり方がかなり疑問…というか、歌がほとんど説明みたいな感じで、人が動いてお話をすすめるという作りになっておらず、あんまりわかりやすくないダイジェスト版みたいな印象を受ける。とくにロメオがティボルトを殺すところなど、ほとんど説明だけみたいな感じで素早く終わってしまって全然、迫力や深刻さがない。そのわりにふつうのプロダクションではほぼカットされる楽団のくだりなどは残っていて、台本についてはかなり疑問である。

 全体的にまったく情熱的なところやロマンティックなところはない上演で、ちょっとアヴァンギャルドキャバレーみたいな感じがする。それこそミュージカル『キャバレー』のMC風な狂言回しの語り手(フロリアン・ジムソン )が出てくるのが特徴で、最初と最後は『オーランドー』のエリザベス1世、途中ではキャバレーのスターやマレーネ・ディートリッヒ風のドラァグクイーンとして登場する。これに引きずられて全体がキャバレーショーのようになっているのだと思うのだが、それとここで提示されている『ロミオとジュリエット』の物語がきちんと合っているかというとけっこう疑問である。