相変わらず宣伝が…松竹ブロードウェイシネマ『ロミオとジュリエット』

真 松竹ブロードウェイ『ロミオとジュリエット』を見てきた。これは2013年にデヴィッド・ルヴォー演出でブロードウェイで上演された公演を撮影したもので、ロミオ役がオーランド・ブルーム、ジュリエット役がコンドラ・ラシャドである。

 グラフィティが書かれた壁みたいなセットが出てくる序盤をはじめとして、現代風の美術は悪くないのだが、急に火を使うような演出はちょっと気取った感じで、比較的リアルなセットとあまりあっていないように見えた。オーランド・ブルームはすごく頑張っていると思うし大変ハンサムなロミオには違いないのだが、やはりちょっと舞台慣れしていない印象で、過剰にロマンティックで一本調子になりがちだ。一方でラシャドのジュリエットはわりとリアル志向で、魅力的だがどこにでもいそうな表情豊かな若い女性だ。ロマンティックなロミオと、親しみやすい近所の女の子ふうなジュリエットの息があまりあっていないように見えるところがある。

 一方で良いところもある。乳母がロミオとの結婚式の情報をジュリエットのところに持って帰ってくる場面の演出はなかなか良かった。自転車で出かけてロミオと結婚式の打ち合わせをしてきた乳母が帰ってくるのだが、ジュリエットがひとりごとで乳母がなかなか帰ってこないことについて口汚く文句を言っているのを聞いてしまう。自分の悪口を聞いた乳母は気分を害して、ジュリエットに結婚式の待ち合わせの話を教えるのを渋るのだが、ここはとてもおかしいし、流れも自然で、乳母が人間味のある女性に見える。また、終盤は非常にスピード感があり、ロミオがジュリエットの死を知ってから最後のジュリエットの死までの流れは、かなり上手にカットしてノンストップで終幕まで突っ走る感じになっていた。

 

 そして『シー・ラヴズ・ミー』の時も思ったが、宣伝の方法は相変わらずよくない。まともなウェブ宣伝をしていないし、チラシの宣伝文句は「シェイクスピア、36年後の真実」で、まるで36年前に構想した演目を上映してるみたいだが、実際はブロードウェイで大規模な新演出の『ロミオとジュリエット』がかかるのが36年目だということらしい…のだが、そんなことこの宣伝文句からはわからないし、だいたいなんでそれで日本での宣伝に役立つと思ったのか全くわからない。『シー・ラヴズ・ミー』はとても楽しい作品だったし、『ロミオとジュリエット』もあまり私の好みではなかったが見る価値はあると思うので、作品の価値がもっとわかるような宣伝をしてほしい。